中学受験の小6は1日何時間勉強している?全国の分布と、時間の長さより先に見たいこと

「1日に何時間勉強していましたか?」。中学受験の勉強を続けている6年生が、2024年6月にYahoo!知恵袋で受験経験者にこう尋ねています(知恵袋 q11299783786【記事公開日時点で2年前の投稿】)。

先に答えを書きます。中学受験をする小6だけを数えた公的なデータはありません。分かるのは、受験する子もしない子も含めた全国の小6の分布です。2026年度の全国学力・学習状況調査では、平日に授業以外で(塾を含めて)3時間以上勉強する小6は10.8%、2時間以上でも22.0%でした。大都市の公立小でも、3時間以上は16.8%です。

本記事が確認した範囲では、「何時間なら十分か」の公的な基準もありません。公的な目安があるのは睡眠で、厚生労働省は小学生に9〜12時間を参考に挙げています。

見立ては、平日3時間以上なら全国では上位1割の側にいるので、時間を足す前に、睡眠と「間違えた問題を直している時間」を確かめる方が、いま分かっていることと合っている、というものです。

全国の小6は、平日に何時間勉強しているのか

国立教育政策研究所の「令和8年度 全国学力・学習状況調査」は、2026年4〜5月に全国の国公私立の小6を対象に行われ、質問調査には936,899人が答えました(実施概況)。設問は平日1日あたりの授業以外の勉強時間で、塾や家庭教師、インターネットで学ぶ時間も含めて答えます。

平日に学校の授業以外で勉強する時間(小6・令和8年度) 最大は30分以上、1時間より少ないの28.9%、最小は全くしないの5.7% 3時間以上 10.8% 2時間以上、3時間より少ない 11.2% 1時間以上、2時間より少ない 28.3% 30分以上、1時間より少ない 28.9% 30分より少ない 14.4% 全くしない 5.7%
図:平日に学校の授業以外で勉強する時間(小6・令和8年度)(出典:国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査」)
平日の勉強時間(塾を含む)小6の割合(%)
3時間以上10.8
2時間以上、3時間より少ない11.2
1時間以上、2時間より少ない28.3
30分以上、1時間より少ない28.9
30分より少ない14.4
全くしない5.7

出典:国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 結果(概要)質問調査抜粋版」p.71(PDF)。本人回答。

本人の申告で、塾の時間を含み、いちばん上の選択肢が「3時間以上」で止まっています。3時間の子と6時間の子は同じ区分に入ります。

平日に1時間以上勉強する小6は、2021年度の62.8%から2026年度は50.3%に減りました(同 p.71)。休日に1時間以上は39.4%です(共同通信の報道(秋田魁新報)も同じ数字を伝えています)。

中学受験をする子だけの数字は無い

本記事が確認した範囲では、この調査は中学受験の予定を尋ねていません。私立小の実施率も49.2%(250校中123校)で、私立小は半分ほどの学校しか参加していません(実施概況)。塾などが語る受験生の目安はありますが、誰に何を尋ねたかを確かめられる形で公表された調査は確認できませんでした。公的統計は受験者数自体も数えていません(受けるかどうかは中学受験をする・しないを整理した記事で扱っています)。

冒頭の質問への回答には、「塾がある日は2〜3時間、ない日は5〜6時間」「平日は塾が17時から21時30分頃まで、帰宅後に1時間」などがあります。ベストアンサーは、6年生の夏休みは夏期講習を含めて1日10時間程度、上のクラスは12時間程度と塾から言われる例を挙げています。平日か休日か、塾を含むかがそろっていないので平均はとれません。言えるのは、受験経験者の答えが3時間前後から夏休みの12時間近くまで開いている、ということまでです。

大都市の公立小では、3時間以上は6人に1人

公立小(市町村立)だけを地域の規模で分けた集計もあります。

平日3時間以上勉強する小6の割合(公立・地域規模別・令和8年度) 最大は大都市の16.8%、最小はへき地の4.4% 大都市 16.8% 中核市 9.3% その他の市 7.9% 町村 5.7% へき地 4.4% 全国(公立) 10.5%
図:平日3時間以上勉強する小6の割合(公立・地域規模別・令和8年度)(出典:国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 回答結果集計[児童質問]」)
地域規模(公立小)3時間以上(%)2時間以上3時間未満(%)
大都市16.812.1
中核市9.311.4
その他の市7.910.5
町村5.79.4
へき地4.48.4
全国(公立)10.511.1

出典:国立教育政策研究所「令和8年度 回答結果集計[児童質問]全国(地域規模別を含む)−児童(公立)」p.14(PDF)。私立小は含みません。

大都市の16.8%は、へき地の4.4%の4倍近くです。ただ、調査は受験の予定を尋ねていないので、「受験をする子が多いから」とはこの表から言えません。塾への通いやすさなど、ほかの違いが重なっている可能性もあります。言えるのは、大都市の公立小でも3時間以上は6人に1人ほどの少数だということです。

長く勉強する子ほど点が高いのは、時間のおかげか

同じ調査で、3時間以上の子の平均正答率は国語71.1%・算数71.2%、全くしない子は国語48.6%・算数43.8%でした(質問調査抜粋版 p.71)。長く勉強する子ほど正答率が高い傾向があります。

ただ、これは同じ時点の比較で、時間を増やしたら点が上がったことを示すものではありません。相関係数は国語0.218、算数0.248で、強い関係とは言いにくい値です。長く勉強する子と短い子では家庭の背景も違いえます(教育格差の記事)。3時間以上の区分に、受験準備を進めた学力の高い子が多く入っている可能性もありますが、調査からは確かめられません。

睡眠は何時間を下回ると気をつけたいのか

「体を壊さないか」という心配に公的な数字で答えられるのは睡眠です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する」としつつ、特定の年齢で一律に区切るのは適当でなく、個人の状況に応じることが重要だと注記しています(推進専門委員会 資料4-1 p.7【記事公開日時点で2年前の資料】、ガイド本体【記事公開日時点で2年前の資料】)。

実際の睡眠時間で全国のデータが近いのは、スポーツ庁の調査です。対象は小6ではなく小学5年生で、2025年4〜7月の実施です。

小5の睡眠時間(令和7年度)8時間以上(%)6時間以上8時間未満(%)6時間未満(%)
男子71.724.93.5
女子73.624.02.4

出典:スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果について(概要)」p.6(PDF)。

足し算すると、8時間未満の小5は男子28.4%、女子26.4%です(本記事の計算)。区切りが「8時間以上」までなので、目安の9時間を下回る子の割合は分かりません。勉強時間と睡眠を同じ子で結びつけた全国データも、本記事が確認した範囲では見当たらず、「長く勉強する子ほど睡眠が短い」とは言えません(睡眠を押しのけるスクリーンの話はスクリーンの記事)。

「上達は練習時間で決まる」は本当か

「長くやった人ほど上達する」という考えの土台になった研究として知られるのが、心理学者 Ericsson らの1993年の論文です(Psychological Review 100(3)【記事公開日時点で33年前の論文】)。ベルリンの音楽大学のバイオリン専攻生を調べ、才能によると思われてきた熟達者の特徴の多くは、少なくとも10年の集中的な練習の結果だと論じました。数えたのは「意図的な練習(deliberate practice)」、つまり指導者が一人ひとりに目標と方法を示し、それに沿って上達のために一人で行う練習です(Ericsson & Harwell 2019【記事公開日時点で7年前の論文】)。

「1万時間の法則」はこの論文の結論ではありません。Ericsson 自身によると、1万時間は最も優れたグループが20歳までに一人で練習した時間の平均で、そのグループ10人の半数は20歳で1万時間に届いていませんでした(Ericsson の寄稿、Salon 2016年【記事公開日時点で10年前の記事】)。

反論もあります。Macnamara らは2014年、88件の研究(計11,135人)をまとめ、練習量で説明できる成績の差の割合を、ゲーム26%、音楽21%、スポーツ18%、教育4%、職業1%未満と示し、意図的な練習は重要だが言われてきたほどではないと結論しました(Association for Psychological Science の発表、Psychological Science 25(8)【記事公開日時点で12年前の論文】)。「教育」にどんな年齢の、どんな練習を数えた研究が入っているかは確かめていないので、4%を小学生の受験勉強に当てはめることはできません。

Ericsson と Harwell は2019年、Macnamara らが数えた練習は元の定義と大きく違うと反論し、定義に合う研究だけで計算し直すと説明できる割合は29%、測定の誤差を補正すると61%になると主張しました(Ericsson & Harwell 2019)。一方、1993年の研究を39人で再現しようとした研究では、最も優れたグループと次のグループで、18歳までの一人での練習時間に統計的な差が出ませんでした。練習量の効果そのものは大きかったものの、元の研究よりかなり小さかったとも報告しています(Macnamara & Maitra 2019, Royal Society Open Science 6, 190327【記事公開日時点で7年前の論文】)。

練習量がどこまで効くかは決着していません。ただ、練習を重く見る Ericsson の側も、数えていたのは時計の時間ではなく、目標と方法が決まった練習の時間でした。定義を広くとった集計では、教育の分野で説明できる差は小さい値でした。どちらの立場に立っても、「何時間勉強すればいいか」は「その時間のうち、できない所を直している時間はどれだけか。そのために睡眠を削っていないか」という問いに置き換えて考えることができます。

3時間を超えているなら、先に確かめたい2つのこと

見立ては、平日3時間以上なら全国では上位1割、大都市の公立小でも6人に1人の側にいるので、時間を足すかどうかより先に、睡眠が目安を大きく下回っていないかと、勉強のうち間違えた問題を直している時間がどれだけあるかを確かめる、というものです。

根拠は三つです。全国の分布で3時間以上は少数派であること。時間の上限を考える公的な基準が睡眠の目安しかないこと。熟達の研究では、練習を重く見る側も効く練習を目標と方法が決まったものに限っていたこと。三つ目は受験勉強を直接調べたものではなく、そこから移して考えています。

順番確かめること
1就寝と起床の時刻から睡眠時間を計算する
29時間を大きく下回っていれば、まず睡眠を戻す
3今日の勉強のうち、間違えた問題を直した時間を数える
4時間を足すなら、直しの時間として足す
勉強時間を足す前に確かめる順番 手順:就寝と起床から睡眠を計算 → 9時間を大きく割れば睡眠を戻す → 直しに使った時間を数える → 足すなら直しの時間を足す 就寝と起床から睡眠を計算 9時間を大きく割れば睡眠を戻す 直しに使った時間を数える 足すなら直しの時間を足す
図:勉強時間を足す前に確かめる順番(出典:厚生労働省の睡眠の目安と熟達研究をもとに本記事が作成)

知恵袋の質問者は「まだ勉強法が曖昧で長続きしません」とも書いていました。直しの時間を数えるのは中身を見ることなので、この悩みにも向いています(量と効果の関係は宿題の記事でも扱いました)。

「難関校には長時間が必要」という考え方の強さと弱さ

いちばん強い反対は、「難関校に受かるには長い時間が要る」という考え方です。知恵袋のベストアンサーが挙げた、夏休みに1日10〜12時間という塾の指導例も、これに立っています。

裏づけはあります。入試は定員を争うもので、出題範囲の量も多い。全国データでも長く勉強する子ほど正答率が高い傾向があり、受験経験者も長い時間を語っています。

弱いところは、受験生の勉強時間と合否を結びつけた公表データが、本記事が確かめた範囲では見当たらないことです。正答率の差は同じ時点の比較で、家庭背景とも重なります。Ericsson の研究も、時間の長さそのものではなく、目標と方法が決まった練習の量を見ていました。

結論が変わる条件もあります。塾の課題がすでにできない所に絞った練習になっていて睡眠も足りているなら、時間を足す理由は強くなります。睡眠を削って足しているなら、先に睡眠を戻す方が筋が通ります(予定の詰まりすぎは習い事の記事)。

まだ分かっていないこと

中学受験をする小6だけの勉強時間の分布は、公的には分かっていません。3時間以上の子が4時間なのか8時間なのかも、選択肢が3時間で止まるため分かりません。勉強時間を増やしたときに成績がどれだけ伸びるかも、同じ時点の相関しかないので分かりません。小6で睡眠が9時間を下回る割合と勉強時間との関係、受験準備が長い目で心身にどう影響するかも、本記事が確かめた範囲では全国データや研究がありません。

全国学力・学習状況調査の次の結果は、例年どおりなら2027年夏に公表され、勉強時間の減少が続くかはそこで確かめられます。

まとめ

中学受験の小6だけを数えた公的な勉強時間のデータはありません。全国の小6では平日に塾を含めて3時間以上が10.8%、大都市の公立小でも16.8%で、受験経験者の答えは3時間前後から夏休みの12時間近くまで開いています。何時間なら十分かの公的基準はなく、目安があるのは小学生の睡眠9〜12時間です。

見立ては、3時間以上なら時間を足す前に、睡眠と直しに使っている時間を確かめる、というものです。「難関校には長時間が必要」という考え方には出題量の多さと正答率の傾向という裏づけがありますが、受験生の時間と合否を結びつけたデータは確かめられていません。それが出るまでは、時間の長さより睡眠と中身を先に見る方が、今ある研究と食い違いが少なくなります。

参考文献

  1. 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 結果(概要)質問調査抜粋版」2026年8月 https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/report/data/26summary_shitumon.pdf
  2. 国立教育政策研究所「令和8年度 回答結果集計[児童質問]全国(地域規模別を含む)−児童(公立)」 https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/factsheet/data/26p_408.pdf
  3. 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 実施概況(小学校)」 https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/factsheet/data/26p_101.pdf
  4. 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 調査結果」 https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/index.html
  5. 共同通信「勉強1時間、10ポイント超減少 授業外で、5年前の調査に比べ」(秋田魁新報、2026年8月3日) https://www.sakigake.jp/news/article/20260803CO0104/
  6. 厚生労働省 第2回健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料4-1「休養・睡眠領域」令和6年3月11日 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001222160.pdf
  7. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年2月 https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  8. スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果について(概要)」令和7年12月 https://www.mext.go.jp/sports/content/20251217-spt_sseisaku02-000046317_000101.pdf
  9. Ericsson, K. A., Krampe, R. T., & Tesch-Römer, C. (1993). “The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance.” Psychological Review, 100(3), 363–406. https://doi.org/10.1037/0033-295X.100.3.363
  10. Ericsson, K. A. (2016). “Malcolm Gladwell got us wrong: Our research was key to the 10,000-hour rule, but here’s what got oversimplified.” Salon. https://www.salon.com/2016/04/10/malcolm_gladwell_got_us_wrong_our_research_was_key_to_the_10000_hour_rule_but_heres_what_got_oversimplified/
  11. Macnamara, B. N., Hambrick, D. Z., & Oswald, F. L. (2014). “Deliberate practice and performance in music, games, sports, education, and professions: A meta-analysis.” Psychological Science, 25(8), 1608–1618. 発表資料 https://www.psychologicalscience.org/news/releases/becoming-an-expert-takes-more-than-practice.html
  12. Ericsson, K. A., & Harwell, K. W. (2019). “Deliberate practice and proposed limits on the effects of practice on the acquisition of expert performance: Why the original definition matters and recommendations for future research.” Frontiers in Psychology, 10, 2396. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6824411/
  13. Macnamara, B. N., & Maitra, M. (2019). “The role of deliberate practice in expert performance: revisiting Ericsson, Krampe & Tesch-Römer (1993).” Royal Society Open Science, 6, 190327. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6731745
  14. Yahoo!知恵袋 質問 q11299783786(2024年6月) https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11299783786

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